自分に合ったライターを見つけ、代筆を依頼する方法

企業出版本を出す場合は書籍ライターを起用するのが現実的だけれど、書籍ライターに執筆を依頼するのはハードルが高い。どうやって自分に合ったライターを見つけ、代筆を依頼すればいいのか――というのが前項(企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方②)の概要でした。

本項では、著者自らが書籍ライターを探して依頼する流れを前提にして進めます。

企業出版を扱う出版社に相談すれば、本の執筆を専門におこなう一定レベル以上の書籍ライターを紹介してもらえる確率は高くなりますが、問題は、著者自身が探す場合です。

一般にはネットを使って探すことになるでしょう。ところが、ライターを名乗る人はたくさんいるだけに見極めるのは難しいはずです。

そこで信頼できる腕利きのライター、自分に合ったライターを見つける方法をお伝えしましょう。


①絶対条件は実績
②得意分野
③バックグラウンドの発信
④「顔の見えるライターかどうか」


①絶対条件は実績

最近は、自分のブログや自サイトにSEO対策を施した文章を掲載し、アフィリエイトの収入を得るウェブライターが増えています。文章力の高いウェブライターもたくさんいると思いますが、書籍の執筆をウェブライターに頼んではいけません。

ウェブライターはアフィリエイト記事を書くのは得意ですが、著者の話を聞き、その聞いた話をもとにストーリー展開を考えた構成を立て、著者に成り代わって書く実力がないと考えられるからです。

さらっと言っているようですが、3つのポイントがあります。「著者の話を聞き(=取材力)」、「その聞いた話をもとにストーリー展開を考えた構成を立て(=構成力)」、「著者に成り代わって書く実力(=文章力)」という3点です。

なかでも、いわゆる書籍ライティングで重要なのが「取材力」です。一冊の本を書きあげる書籍ライターには、著者と信頼関係を築く人間力、相手の話を共感をもって耳を傾ける聞く力、著者から書くべき話を聞き出す質問力、著者に気持ちよく話してもらうコミュニケーション力などが求められます。

これらは一朝一夕に磨かれる能力ではありません。場数を踏み、少しずつ築きあげていくしかありません。自宅でアフィリエイト記事を書いているだけでは培われない高度な技術(あるいは一部は生まれもった資質)であり、著者の期待に応えるために不可欠な力です。

これはウェブライターに依頼してはいけない理由であるとともに、著者とライターとの相性が大事という根拠でもあります。いくら実力のあるライターでも、相性によってはうまく運ばない可能性は残念ながらあります。

前置きが長くなりましたが、企業出版本の原稿執筆を依頼できるライターかどうを見分ける第1の方法は、そのライターが公開している実績をよく確かめることです。

実績がわからないライターは論外として、ブログ記事やアフィリエイト記事を書いているような場合、そのライターは候補から外してください。

そのうえで、インタビュー原稿の実績を確認しましょう。書籍案件の実績を公開していればベスト、そうでなくても雑誌(できればビジネス誌)のインタビュー原稿に長けているライターであれば書籍ライティングはある程度は可能かと思います。

ただし、雑誌記事などの短い記事しか経験のないライターの場合、前記の「構成力」に欠け、読者を引き込むストーリー性のある構成と原稿を作成するのは難しいかもしれません。

まとめると、実績で望ましいのは書籍の代筆経験が豊富であること、書籍の実績が分からなくても、雑誌などのインタビュー原稿を数多くこなしていること、この2点です。

出版社から書籍ライターを紹介された場合、実績を必ず確認してください。書籍ライティングの経験があれば、どのようなジャンルの本を書いてきたのか、可能であればそのライターが執筆を担当した書籍を出版社に頼んでいくつか見せてもらいましょう。

書籍ライティングの実績がないライターを紹介された場合、雑誌原稿などのインタビュー記事を担当しているかどうか、出版社に聞いてみてください。そしてなぜそのライターを起用しようとしているのか、理由を確認するといいでしょう。

出版社から明確な理由があればまだ安心できますが、いまいち説得力に欠ける場合、頼めるライターが不足しているかもしれません。

②得意分野

じつはライターといっても得意分野はさまざまです。前述のウェブライターはライターとして含めない前提でまとめると、ライターが活躍する分野は「広告」「雑誌」「書籍」「ルポ」などでしょうか。

「広告」は文字どおり広告文を考えるコピーライターのことで、一般に書籍などの長文やインタビュー原稿を得意としません。

「雑誌」の場合もよくあるグルメ雑誌やタウン誌で活躍しているライターは長文の執筆は厳しいと思います(理由は割愛)。雑誌でもビジネス誌などを主戦場に経営者などの〝偉いさん〟に取材する場数を踏んでいるライターは一定の実力はあるとみていいです。

「書籍」は本の執筆をメインに手がけているライターなので、実績としていちばん望ましいライターです。

「ルポ」とはジャーナリストといったほうがイメージしやすいかもしれません。ようするに、自らの問題意識をもとに取材活動を行い、社会に問題を提起するような文章を書く人のことです(ざっくりいえば)。書き手としての能力はピカ一かもしれませんが、人の話を聞いてその人に成り代わって書く、という柔軟性や共感性がどうか……というところでしょうか。

長くなりましたが、つまりライターとひと口にいっても得意分野があるので、実績などを見て確認しましょう、ということです。

③バックグラウンドの発信

これは意外と大事だと思っています。バックグラウンドとはどういうことかというと、そのライター自身の背景です。ライターとの相性を、できるならば依頼する前に見当をつけたいものです。そこで参考になるのが、ライターが発信しているブログやSNSなどの情報です。そうしたプライベートな情報には、ライターの素の一面があらわれているものです。

ライターのSNSアカウントがわかる場合、チェックして人柄や考え方などに触れてみましょう。もちろん、ネットでの発信だけでその人のすべてを理解できるわけではありませんが、まったく情報がないよりも人となりの輪郭をつかむことはできるはずです。

④「顔の見えるライターかどうか」

結論としては、「顔の見えるライターかどうか」がいちばん重要かもしれません。ライターとしての実績は申し分ないという前提で、最後のひと押しがなにかといえば、やはり「この人の相談してみようかな」と思わせるなにかでしょう。

その「なにか」とは、「なんとなく自分に合いそう」「この人なら信頼できそうだ」という、実績を超えた人としての信頼の部分ではないでしょうか。

そうした顔の見えるライターが見つかれば、思い切って相談してみることです。それでも残念ながら、ライターには当たり外れがあるのも事実です。出版社から紹介を受けた場合でも同様、そのライターが自分に合いそうか、いろんな角度から質問されるといいでしょう。

本一冊を代筆する書籍ライティングという世界は、私自身が10年以上経験してきたのでわかりますが、やはり難しいです。トラブルの話もよく聞きますし、実際にトラブルになった案件を引き継いだこともあります。

ただ、自慢するわけではないのですが、私自身はトラブルはほとんど経験がありません。共感力だけが取り柄(笑)なので、著者さんにぐっと入り込み、二人三脚で一生懸命に仕事をすることを大事にしてきました。

さておき。

「企業出版本の原稿を誰が書くのか」というテーマでお届けしてきましたが、これは奥が深いだけにだだまだ言い足りません。10~20分の1くらいしか書いてない気がします。書ききれなかった思いは、また別の機会に。

著者の皆様が、この記事を参考に、どうか良いライターと巡り合えますように。

(関連原稿)
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方①
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方②
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方③