著者主導で進める企業出版だからこそ、本づくりへの主体的なかかわりが著者自身に求められます。
企業出版に限らず、本づくりは答えのない営みです。数学のように明確なゴールがないにもかかわらず、最終的に校了して印刷にかけ、本というかたちに仕上げなければなりません。
そんなつかみどころのない本づくりのなかでも、企業出版は著者主導で進んでいく面があるため、著者の主体性が問われます。
では著者に求められる主体性とは何なのか。それは企業出版の本づくりのプロセスを成功に導くための「3つのポイント」でもあります。
企業出版を成功に導く3大ポイント
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01.
「出版の目的」を著者自身が明確にイメージする
何を目的に本を出すのか――この答えが本づくりの核となります。「こんな本をつくりたい」、そう著者自身が強く思い描かなければ、幸先よく出版のスタートを切ることはできません。
企業出版の目的として一般にあげられるのは、ブランディングや集客、ノウハウの発信、リクルートなどでしょう。こうした出版の目的が書籍のタイトルや企画を導き出すヒントになります。
そのうえで、出版の目的をつくり手たちと共有することで、答えのない営みに方向性が見出され、企業出版プロジェクトが成功に向かって走り出すのです。
出版の目的に加え、ターゲットをイメージすることも大事です。誰に何を伝えたいのか――本のメッセージを届けたい読者像が明確になっていなければ、独りよがりの本づくりになってしまいます。〝著者主導〟というのは、読者を無視した本づくりをするという意味では決してありません。
誰に何を伝えるべきかを理解しているということは、誰が何を知りたいと思っているのかという読者像をイメージできているということでもあります。本の目的が決まり、読者ターゲットが固まることで、書籍の具体的なタイトルと構成、コンテンツを検討できるようになります。
さらに付け加えると、出版時期もイメージしておきましょう。一般に周年事業やイベント、セミナーの開催時期にあわせたり、新しい商品やサービスを発表するタイミングに出版をあてたりするケースが多くなります。
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02.
出版の目的やジャンルに応じた出版社を選ぶ
企業出版を行う出版社は複数あり、出版社によって得意なジャンルは異なります。
ビジネスや経営に強いのか、医療や健康に関する書籍が充実しているのか、ヒット作を多く出しているのか……出版社ごとに強みや特徴が異なるからこそ、企業出版の目的や読者ターゲットに相応しい出版社を選ぶ必要がります。
さらに出版費用も出版社ごとに大きな開きがあるほか、企業出版の本づくりに取り組む姿勢にも出版社ごとに違いがみられます。著者の思いを最大限に尊重する出版社もあれば、著者の強みを活かした企画に重点を置く出版社もあります。
いずれにしても大事にしたいのは、著者が世に問いたいメッセージを読者の知りたい内容に転換してくれる編集姿勢をもっているかどうか、です。何もかも著者の言いなりでは、読者が求める内容に仕上げることはできません。
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03.
著者、編集者、ライターの三人四脚の本づくり
本づくりという答えのない営みを成功させる最大のポイントです。この三人四脚の本づくりで最も大切なのは「ビジョン共有」です。本づくりに取り組む著者、編集者(出版社)、ライターの三者が出版の目的を共有し、誰に何を伝える本なのかを理解し、ともに同じゴールをめざすことで、はじめて著者、読者、出版社ともに満足のいく書籍ができ上るのです。
出版の目的をメンバーで共有しているからこそ、軸のある企画構成ができます。
軸のある企画構成があるからこそ、意味のある取材ができます。意味のある取材とは、インタビュアーは何を聞くべきかを理解し、インタビュイーは何を聞かれ何を答えるべきかを理解し、双方が誰に何を伝える本なのかを理解したうえで行われる取材です。
このように意味のある取材ができるからこそ、内容の濃い原稿ができ上ります。内容の濃い原稿とは、著者の思いが反映され、その著者の思いが読者が知りたい内容に分かりやすく変換され、出版社が期待するコンテンツになっている、そんな原稿です。
このように、成功する企業出版の本づくりは著者、編集者、ライターの信頼関係あってこそ成り立つものですが、企業出版にチャレンジしたい著者にとっては何をどうすればよいのかすら見当がつかないことでしょう。
このブラックボックスになった制作プロセスを見える化し、企業出版のアドバイスができる点に、現役書籍ライターである私の役割があると思っています。