本の価値は文章の質で決まる。だからこそ本の原稿は著者が書くのがベストだが、本一冊書き上げるのは難しく、書籍ライターを起用するのが現実的な手段。ただしその場合、ライターに依頼するためのポイントを抑える必要がある――というのが前回の記事「企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方①」のおおまかな内容でした。
では書籍ライターに依頼するために大切なポイントとはどのようなものでしょうか?
書籍ライターを起用するのはハードルが高い
まず厳しい話を先にしますが、書籍ライターを起用することになっても厄介なことがあります。いざ誰かに本の原稿を書いてもらおうと思っても、誰にどうやって頼めばよいかわからないのです。
ライターに代筆を依頼する難しさは2つの側面があります。
①そもそも書籍ライターを知らない難しさ
②自分に合った書籍ライターに代筆を依頼する難しさ
①そもそも書籍ライターを知らない難しさ
ライターは特殊な職業だけに、ライターを知ってるよという人はあまりいないはずです。ライターという、見たことも会ったこともない人物に、これまでのビジネス経験や極めてプライベートな話を代わりに書いてもらう、そのイメージを明確に持てる人は少ないのではないでしょうか。
企業出版を専門に扱う出版社であれば、お抱えのライターを何人も抱えているものです。企業出版で本を出す場合、出版社からテーマに沿ったライターを紹介してもらえることも少なくありません。
しかし、よほど取材慣れした著者でもない限り、自分の思いをくみ取った原稿を書いてもらうためにどうすればよいのか、よくわからないのが正直なところではないでしょうか。
②自分に合った書籍ライターに代筆を依頼する難しさ
これはライターに代筆を依頼する際にもっとも重要であり、またもっとも難しい点でもあります。
私自身、大手出版社から出される本のゴーストライティング(書籍ライティングともいいます)を70冊以上行ってきました。その経験で断言できるのは、著者の期待どおりの原稿、期待以上の原稿ができあるかどうかの決め手は、「誰に書いてもらうのか」です。
本というメディアの本質的な価値は文章そのものです。その文章を書くのが書籍ライターであれば、その本の価値は書籍ライターによって左右されることになります。
本の価値を決定づけるのは書籍ライターの能力であるにもかかわらず、そのライターを見つけるのが難しく、仮に出版社から紹介してもらえたとしても、自分の思いをくんだ文章、読者に伝わる文章をどうやって書いてもらえばいいのかわからない。
原稿を左右する著者とライターの相性
さらに厄介なことがります。ただ文章がうまいライターに依頼するだけではだめで、著者とライターの相性が大事なのです。
たとえば著者が「A」という話をしたとします。その「A」が、ある程度ビジネスに精通している人であれば誰でも理解できる内容であれば、話し手と聞き手との間で大きな齟齬は生まれにくいかもしれません。
ところが、著者の思いや信念、ビジョンといった言語化しにくい内容だった場合、話し手と聞き手とのあいだでの意思疎通が大切になります。
もちろん、場数を踏んだ経験豊富なライターであれば、どのような話であってもある程度は理解できるでしょう。人生経験豊富で人間力にあふれたライターであれば、著者の懐に飛び込んで、共感をもって話に耳を傾けてくれるかもしれません。
しかし著者の思いを本当の意味でくみ取り、「そうそう、こういうことが言いたかったんだ!」と著者が膝を打つような原稿を書いてもらえるかどうかの決め手は、最終的には著者とライターの〝相性〟にかかっていたりするのです。
では、どうやって自分にぴったり合った書籍ライターを見つけ、思いをくみ取った原稿を書いてもらえればいいのか。次回、詳しくお伝えすることにしましょう。
(関連原稿)
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方①
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方②
企業出版本の原稿を誰が書くのか――書籍ライターとの出会い方③