企業出版と費用の関係をどう捉えればよいのか?

企業出版という仕組みを使えば早期に出版が実現するだけでなく、出版社の意向に強く左右されすぎずに、著者自らの思いを出発点に思うような本づくりが可能になる――。

しかしながら企業出版は著者自らが費用を負担する出版形態であり、突き詰めると企業出版のデメリットは「費用がかかる」という一点に集約される――。

というのが前回のブログ(企業出版は〝後ろめたいこと〟なのか?③)の結論でした。

企業出版と費用の関係――この点をどのように捉えればよいのでしょうか。

攻めの投資と負の投資

「企業出版の費用」を広報やブランディングのための〝攻めの投資〟と考えるのか、商業出版では必要のない費用を負担せざるを得ない〝負の投資〟と考えるのかによって企業出版の捉え方は変わってきます。

まず〝企業出版の費用は攻めの投資〟と戦略的に考えている企業の場合、なかでもとくに利益を出している法人企業は迷いなく企業出版を選択し、早々と書籍化を実現して事業にプラスの影響をもたらしています。

そもそも、企業出版にねん出するだけの資金があるということは、すでに事業で一定の成果を出しているという意味でもあり、そのノウハウや経験を知りたい読者が一定数存在すると考えることも可能です。

そうやって企業出版の費用を戦略的に考え、迷いなく企業出版に向けて動き出せる著者や企業は、本づくりのプロセスもスムーズに進みます。そうした企業や著者の事業は強みや実績が明確であることが多く、書籍のタイトルや構成といった「軸」を見つけやすいのです。

軸の通った書籍は全体を通じて内容に一貫性と説得力があり、いわゆる〝良い本〟に仕上がります。すると読者にも受け入れられ、〝売れる本〟になりやすいのです。

反対に、企業出版の費用を負担するのが難しい場合、その理由はふたつにしぼられます。ひとつは、「自ら資金を出してまで本を出したくない」というケースと、「企業出版の費用を捻出するだけの資金がない」というケースです。

前者の場合、商業出版にチャンレジするといいでしょう。一方の後者の場合、企業出版の資金を準備できるまで事業に集中して取り組むか、あるいはやはり商業出版をめざしてみるのもいいかもしれません。費用の負担が重くても、確かな経験とノウハウがあれば商業出版は実現可能だと思います。

費用負担を戦略的に捉えれば企業出版は事業のプラスになる

いずれにしても、企業出版の課題は〝費用負担をどう捉えるか〟に行き着くといえます。投資するだけの資金力があってもなくても、〝企業出版の費用を戦略的に捉えることができるかどうか〟によって企業出版の意義が変わってくるということです。

そして企業出版の費用を戦略的に捉えることができるのであれば、企業出版という選択肢は御社の事業に必ずプラスとなるでしょう。

企業出版の出版費用は経費計上も可能

ちなみに企業出版で負担する費用は経費計上も可能のようです。本を出版する際の権利である出版権は税務上、繰延資産に該当するため、出版権の設定契約で定める期間で償却可能といわれています。

もっとも私は税務の専門家ではありませんので、顧問の税理士の先生に必ずご確認ください。

本業で稼いだ利益を出版費用に戦略的に投じ、企業出版によって自社のブランディングや広報につなげ、新たな利益の創出に結びつける――。

企業出版から繰り広げられる経営の好循環サイクルを回すことは十分可能なのです。

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